予定調和を徹底的に破壊する『エル ELLE』の潔さ
【自分に起こるすべてをコントロールする】ことの圧倒的な強さ。
例え誰にも理解されなくても、きっと「彼女」は気にしない。
自分はどうしたいのか──それが「彼女」の原動力のすべてだから。
今日は一日中、低気圧できっと体調が悪いに違いない。
デスクにしがみついても、原稿は進まないに違いない。
ということで「インプットの日」決行!
絶対に観たいと思っていた映画のはしご(ありがとうレディース・デー)。
2本目に観たのはエドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』。
面白かった~! 音楽とアクションのマッチング、キャラクターの立たせ方、ありがちではないオチ……とても楽しめました。おススメ。
面白かった……んだけど、1本目の『エル ELLE』が強烈に良かったので、その余韻に吹き飛ばされた感じ。
*ちなみに私は『ショーガール』も好きです。
ほんっとに観てよかった!!!!!
「おススメ映画は何ですか?」という質問には答えやすいんだけど、「一番好きな映画は何ですか?」には答えにくい。
おススメ と 大好き は違う。
生意気な言い方だけど、「おススメ」は「好き」の中から「このあたりなら問題ないかな」という作品を選ぶ。
「大好き」は感性が決めるから、自分でも「なぜ好きなのか」がわからないことも多い。
この映画は間違いなく「大好き」な映画
世界中の映画祭・賞で主演女優賞を総なめにしたにもかかわらず、ヒロイン・ミシェルの造形や描き方があまりにショッキングで、いわゆる「常識」「定型パターン」を気持ちいいほどぶち壊しているがゆえに、賛否両論を巻き起こした問題作……なので、おススメは躊躇します。
簡単に言うと『ワンダーウーマン』の対極にあるような映画。
理解できない、不快だという女性も多いと思う。実際、議論や反発も巻き起こっているそうです。
わかる。
でも、私は心から楽しんだし、快哉を叫びたくなった。
ここまで「自分が自分であること」を徹底的に貫き、「自分の人生」を完璧にコントロールしようとするキャラクターって観たことがないし、それが「女性」というところに打ちのめされた。
もちろん、彼女がそうなった「原因」はあるのだけど、とにかく彼女はカテゴライズされることを厭い、何が起ころうとも「自分の選択」を貫く。
こう書くと「頑張る女性」みたいな印象だけど、きっとミシェル自身は「頑張る女性」と言われることすら嫌だと思う。
「私は私」……みんなそう言うけど、それも、社会に向けた「私」に縛られた「私」でしかない。
イザベル・ユペールは最高
高橋ヨシキさんは、ラジオでこんなふうに語っていた。
「ミシェルさんは、誰もいないところで泣いたりすることに意味があるのか、って思ってるんですよね」
もちろん、傷ついている。怯えてもいる。
でも、彼女は泣かない。相談しない。悩まない。躊躇しない。なぜなら、そんなことはすべて無駄だから。そんなことをしても、何の解決にもならないから。
やりたくないことはしない。決めたことは徹底的にやる。
自分の気持ち、欲望に抗わない。
誰にも理解されなくて構わない。そもそも理解されようだなんて思っていない。
その突き抜け方が、ハンパない。
だけど、力は入っておらず、どこまでも軽やかで、知的で、自由で、美しい。
名だたるハリウッドの女優たちが「こんな役はできない!」と断ったそうだけど、正解。
だってこの役は、イザベル・ユペールのものだから。
再度、注意しますよ。
おススメは、しません。
予定調和にならないフランス映画に慣れてる人でも、劇薬の部類だと思いますんで。
興味のある方は、ちょっと調べてみて、それから決めて。
もしかしたら『ゴーン・ガール』が好きな人なら大丈夫かな。
でも多分、あれより強烈(*''▽'')