「BLを書いています」
何が変わったのか。
先に状況が変わったんじゃない。
意識が変わり、行動が変わって、状況が変わった。
昨夜、とっても嬉しいサプライズがあった。
他人からすれば大したことじゃないかもしれないけど、出会いがもらたしてくれたプレゼントだった。
約3年前、「お仕事でもなんでも、出会いは夜、作られるんですよ」と教えてくれた人がいた。
ワタシは会社員じゃないので、仕事が終わってから、同僚と飲みにいく……ということができない。友達も少ない。だから、自分ひとりで出かけていった。
でも、上手くいかなかった。空回りしていると思った。
今も同じことをしている。ひとりで出かける。見知らぬ人と出会う。
でももう、空回りしているとは思わない。
何が変わったのか。
「鳩村衣杏といいます。作家です。BLを書いています。ボーイズラブです。知ってますか? 男性同士の恋愛です。テレビなんかで聞いたことないですか?」
少し前まで、自信を持ってこう言えなかった。
この仕事にはプライドを持っていたし、ファンを大切にも思っていた。仕事をもらえることをありがたくも感じてた。
もちろん、親兄弟も友人も知ってる。仕事を聞かれたら、ちゃんと答える。
でも、BLを知らない人には言いにくかった。
知らない人に、どう説明すればいいのかわからなかった。気持ち悪いって思われたくなかった。
去年作ったワタシの名刺に「小説家」とはあるけれど、「鳩村衣杏」の名はない。
わかってくれそうな人にだけ言っていた。
わかってもらえなくてもいいや、と思い始めたのは最近。ほんの数ヵ月前。
ワタシは政治家じゃない。教育者でもない。大勢の人に、わかってもらうために、この仕事をしてるんじゃない。
「BLを書いています。ボーイズラブです。知ってますか? 男性同士の恋愛です」
鳩村衣杏になって、15年。
「15年もやってきた」んじゃない。
「BL小説家です」と心から言えるようになるまで、「15年もかかった」んだ。
そして、言えるようになれたら、出会いが自然と増えた。
この仕事にはプライドを持っていたし、ファンを大切にも思っていた。仕事をもらえることをありがたくも感じてた──それはずっと変わらない。
でも、ワタシは、ワタシのことしか考えてなかった。
15年も鳩村衣杏でいさせてもらえたんだから、ワタシは、BLに恩返しをしなきゃいけない。
今からでも、遅くないのなら。
やり方はいろいろある。今、それを考えている。
そして大事なのは、必ず実行すること。
「BLを書いています。ボーイズラブです。知ってますか? 男性同士の恋愛です。楽しいですよ。好きな女の子、沢山いるんですよ。女子だって、ステキな男子が多いほうが嬉しいんです。最近は男性ファンも多いんですよ」